tituti MAGAZINE

noriko tanaka

#02 INTERVIEW 田中紀子

制作中

新しく出る色材とは逆に、今では使えなくなった顔料もあるとお伺いしたのですが。

あります。琉球王朝時代の顔料は手に入らないものが多いので、その場合は、どういうふうに再現しようかと研究します。

顔料や素材の知識を常にアップデートしていかないといけないということですね。蒸しの後の作業はどうなるのでしょうか?

のりを落とします。のりは水の中に浸けるとふやけてくるんです。短ければ 5、6 時間。布の素材や温度の状態でのりの離れが違ってくるので、様子を見ながらなんですけど。のりが離れてきたら水で洗い流します。そうすると染めたところが型紙と同じ模様に出てくるんです。

それまでは全然模様が見えないということですね。

それまでは何なのかわからないなーっていう感じで。あ、ちょうど染めてる時の写真があるかな。わたしは見たらわかるんですけど、他の方が見たら「これはなんでしょうか?」ってなると思います。いろんな色があるのは、どの色にするか試しているんです。なんだかわからないですよね。これは、牛なんです。のりを落とすと絵柄がくっきり出てきます。

染色時の写真

のりの部分は完全に色がのらないのでしょうか?

のらないです。ただ、のりを置いた時に薄すぎると色が通ってしまうので、汚れたり色がついてしまったりします。逆に厚すぎると段差ができてしまうので、色だまりができてしまったりとか。

細かい絵柄でも染めることができるんですね。

それはのりの調整次第です。大きい柄と小さい柄ではのりの硬さを少し変えます。硬すぎると入らないんですね。逆にゆるくしすぎると、のりとのりがくっついて隙間がなくなってしまうので、今度は絵柄が潰れてしまうんです。

のりの調整がうまくいったかは色を差すまでわからないということですか?

いえ、見た感じで大体わかります。でも、すごく細い線だとちゃんと出ているように見えて、色を染めはじめた時に気付くことも。その場合は洗い流してしまってもう一度やり直します。のり置きで失敗したら、次に進んでも絶対上手くいかないので。

作業風景

手間を考えると、失敗したときは心が折れますね。

そうですね。一番は染めた後の水洗いで失敗がわかると心が折れますよ。特に隈取りは時間がかかるので。それが最後に落ちてしまう。「あ、流れた!」みたいな。学生の時はありますね。手も慣れていないし、感覚がわからないので。「あー流れたー、薄くなったー。」って。今はさすがにそういうのは無くなったかな。

経験が重要なんですね。最後に水で流して乾かして、ようやく完成ということですね。

そうですね。後はそれぞれに加工して仕上げます。着物とか帯の場合は生地の状態を整えるために蒸気をあてる「ゆのし」という作業をお願いします。紅型の柄が細かく詰まっている着物だと、ほんとに時間がかかります。毎日やっても一人で一、二ヶ月、柄によっては長いものだと三、四ヶ月かけて作る方も。私はほとんど一人ですが、何人かで着物一反を染めたこともあります。

数人だと気が楽になりますね。

それはそれでまた別の難しさもあると思います。手が違うって言うんですけど、例えば同じ色、同じ調合でも、染める人が変わると違いが出るんですよ。アナログな作業なので、染める人の個性が出ますね。

ピタンガ

手作業ならではということですね。最後にtitutiの前身である新工芸研究会は、新しい工芸の形を模索していくということから始まったとお聞きしました。田中紀子さんご自身はこれからの沖縄の工芸に対して、どう関わっていきたい、どういった形にしていきたいといった考えなどはありますでしょうか?

難しいですね、そういう考えをまとめるのが苦手で。しっかり考えている方には申し訳なくなってしまうのですが。とにかく手に取ってもらう方が心地よくなってもらったり、楽しかったり、嬉しかったり、元気になったり、そういう作品でありたいと思っています。やっぱり沖縄にはじめて来た時からずっと感じている感動や衝撃、今も新しく感じる感動を布に、紅型という技法を使って表現し続けていきたいと思っています。

Noriko tanaka bingata