tituti MAGAZINE

yumiko kinjo

#04 INTERVIEW 金城有美子

こんな邪道な色、こんなの焼き物じゃない。そしたら私がハマったんですよ。

作品についてもお聞きしたいと思います。現在の作品に見られる、さまざまな色を使った表現は初めからではないとお聞きしました。

色を使い出したのは 13 年くらい前。それまではモノトーンで渋めな釉薬メインで使ってて、本当に「ザ・焼き物」っていう感じです。抹茶入れたり菓子器とかそういう渋めのもの。どっちかっていうと、かっこいいっていう雰囲気。モノトーンで作っていました。

たまたま中学生の授業を見ることになって、それならかわいい方がいいよな、わかりやすくてピンク、黄色、水色で。私からするとこんな邪道な色、こんなの焼き物じゃない。

そしたら私がハマったんですよ。

私はどちらかというと濁らすっていう感じですけど、大人なトーンの色使いにしようと思ったんです。ただピンク、水色なだけじゃなく、色にもうちょっと深みを持たせながら土を変えるとか。

あ、これなら遊べるなと思ったんですよ。大人が使える大人がかわいい。自分が持ってる渋いのがミックスできるなって思ったんですよ。それがきっかけですね。

yumiko kinjo

三千円の価値っていうものを大事にしてた心の傷を作りたいんです。

色を使い始めてから、すぐに現在の色にたどり着いたわけではないのですね。

ないです。沖縄だとまず原料屋さんがない。なので、土を取り寄せてそれを試して色をかけて。また、色見本って信じられないじゃないですか。色見本で出てきたって本当にこうはならないでしょって。だから自分で実際いじって、これだったらこれとこれ足してみようかとか。ベースになる土を決めるだけでも全然変わってくるんです。画用紙に色を塗るか和紙に色を塗るかみたいな感じで、同じ色でも風合い変わりますよね。ああいう感じです。土を変えると全く表情変わる。だから、よりプラスチックにならないように、ベタって見えないように工夫するんです。そこに動きを持たせるっていうか。

それは色を使って面白いことができるという確信があったらから、それだけ試したということですね。

そうです。きっと遊べる範囲が広がると思ったんですよね。若い子達がこれだけ反応するってことで、私もテンション変わるから。

若い子たちに、陶芸いいよ、織物いいよ、って言っても使ってもらわない限りわからないわけですよ。使ってもらわないと話にならないと思って、出来るだけちっちゃいカップ作ったり。まずは、そのカップをいいなって使ってもらえればいいんです。

で、使って割れた時に、「あの時買ったのに。」っていう心の傷が欲しいわけです。欠けた、割れたって結構ショックなんです。三千円で買ったもの、三千円の価値っていうものを大事にしてた心の傷を作りたいんです。この大事にしてたものっていう気持ちを、育てるって言うんでしょうか。そうすると違うものを見た時に、この人のいいかな、自分の生活にあっているかなって、どんどんいろんな作家さんの作品を見る入口になっていく。

だから一回使ってもらうっていうのが一番大事。織物だと色も褪せてくるだろうけど、やっぱり同じものを買い求めてくるんですよ。ずっと使って愛着があって、馴染んでくる自分のものになってくる。それが欠けるとか、色が薄れるとか、ほつれるってなんか寂しい、という感じがすごく大事。

若い世代に陶器を使ってもらいたくても、選んでもらうものがないっていうのがあった。だから、これは始めてもいいかって思って。

ある意味女だから良かったんだと思う。ピンク使っても誰も何も言わないから。いきなり本当にガラって変えたから「何事? 何があったの?」って。楽しかった。急に乙女。何があったんですかみたいな感じだったから。

それでも小さい子とか、今までなかった人たちから反応が来たんですよ。そこが育てがいがあるじゃないけど、この人たちが好きになってくれると次の世代が、陶芸を好きになってくれるきっかけになるかなって。

yumiko kinjo

広い世代が受け入れられますよね。作品の勝手な印象としてはメキシコの建築家、ルイス・バラガンの色彩を想起します。実はお父様のお仕事で那覇市民会館、これも別の意味で南米を感じたので、金城家には南米の感覚が通っているのかなと感じました。

父はマチュピチュ行きたかったんですよ。憧れの場所。バラガンは見にいきました。機会があってこれは逃せないと思って無理矢理。楽しかったです。メキシコはいい。ピンクの家もこんな色いいんだって。バラガン邸もすごいお屋敷じゃんってびっくり。「せっかくなんで水流しますね。」って水も流してくれて、うわーって。建築もいいですよね。大きくて巨大な建造物、太刀打ちできないじゃないですか。勝てないっていう感じ。

うらやましいですね。先程のピンク、黄色でも濁らすというお話ですが、作品からは鮮やかな色自体に光が当たってできた光と影、その印象をそのまま器の色彩に落とし込んだように感じられます。

それ正解。光と影。それでも自分の中では色は苦手だと思ってて、これは正解なのかなと思いながら作ることは今でもあるんですよ。だから、すごい長池さんのバランス、このサイズ感で色が入ると、この色がいいんだなっていうのが参考になる。色見本帳じゃないけど、切り取ってみると面白いなって。

長池さんの色彩はモダンと伝統のバランスが非常にいいですよね。最後に今後、沖縄の工芸にご自身がどう関わっていくか、または関わっていきたいということがあれば、お聞かせ下さい?

常に目の前にあった面白そうなのをやっているので、あまり夢とかはなくて。今こうやって工芸を好んで買ってくれる人がいるっていうのは、工芸をやってる身からするとすごい幸せなこと。作れる環境にある、それを求めに来る人たちがいるっていうのは、すごくいい時代に生まれたなって思うんですよ。

大丈夫かこれって思いながらずっとやってるけど、作ることで誰かが喜ぶのは喜びでもあるし、とにかく作り続けられたらと思います。

なので鍛えてます。

ボクシングしてますよね。

ボクシングしてます。最近空手も始めてます。

先生に言われました。「受けることがまずだからね。受けてから逃げる。」「逃げるんですか?」「向かっちゃダメ、怯んだら逃げろ。」

yumiko kinjo