tituti MAGAZINE

Noriko tanaka workshop

#01 INTERVIEW 田中紀子

titutiの空間を一気に沖縄の自然へと解放させてくれるのが、「田中紀子」の紅型。繊細なタッチと大胆な構図が同居する、印象的な紅型がどのように形となってくのか。tituti magazineの第一回、第二回と田中紀子さんのお話をきかせていただきました。現在の表現が必然とも思える経緯を、ご自身の思い出とともに紐解いていきたいと思います。

Noriko tanaka bingata

田中紀子さんの作品は、空間が抜けていくような色彩やモチーフ、構図が印象的です。いわゆる紅型とは少し違うイメージもあるのですが、それは作品を作り始める時から意識しているのでしょうか?

そういうのを作りたいと強く向かったわけではないのですが自然と。一番は沖縄の日差し。日差しで影が内地と違ってくっきりつきますよね。そのコントラストとか色鮮やかな感じとか。沖縄の光で眩しくってハレーションを起こすようなそんな感じ。そういうのが好きだったので。

よく余白部分に色をつけてないんですけど、これも意味があって。色がつくと背景に対して絵柄があるって形になりますよね。それはそれで好きなんですけど、抜けてると想像できる。平面でなくて立体、空間が広がるといいなという気持ちもあって。

Noriko tanaka bingata

他の染め物とは違って、紅型って顔料を使うのが特徴なんです。顔料って不透明なので上から染めても色が一緒にならないんです。浸透しないので、上に色がのっかる形になるんですね。染めた面と染めた面が重なりますよね。ここに奥行きだったり空間だったり、目の錯覚だったり、そういうのが出るとペタッとした面ではなくて、広がりとか奥行きが出ないかなって思いながら作ってます。

たしかに、紅型らしくないねーというご意見はありますが、今はたくさんの紅型作家もいらっしゃるので、ちょっと人と違うこともしてみたいかなーと思ったりもします。

Noriko tanaka bingata

沖縄の強烈なイメージをそのまま染めたいんだと思います。

ご出身は兵庫県とのことで。

兵庫県の加古川とか高砂、生まれたのは加古川で高校は明石でした。平野なので田んぼや畑が多い印象かな。山陽本線。本線を主張すると田舎っぽいけど、真ん中よりは田舎じゃないって思ってるけどみんな一緒かもしれない。

明石の高校で美術科とのことですが、小さい頃からご興味だったりご家族にそういった関係があったのでしょうか。

母はデザイン科だったらしいんですけど、全然デザインとか、普段描いてるところとか見たことないですし、父も色々作るのが好きな人だったけど、美術系であるとかデザイン系ではなかったですね。

小さいときはビーズで作ってみたり、庭の土を粘土にしてなにか作ってみたり、ていうのは好きでした。あと、遊びで切り絵もやってたりしてました。何か切ったりするのが好きだったかもしれない。

何か切ったり… あはは、怖いですね。自分で言ってちょっと怖くなった。昔、小刀ありましたよね。「肥後守(ひごのかみ)」わかります? 昔ながらの駄菓子屋さんで100円とか200円とか。竹削って竹とんぼとかスコップとか、とにかく木削って作ってみたり紙切ったりとかしてました。

肥後守は全部金属でできてて、「肥後守」って描いてあるんですよ。よく美術系のデッサンとかするのに鉛筆削らないといけないので必ず肥後守みたいな。デッサンは上手じゃなかったけど削るのは上手でした。

Noriko tanaka tool

高校は、美術と音楽と演劇だったかな、兵庫県が高校に特色あるクラスを一つづつ作っていて、美術科が明石にあって。「面白そう」って思って受験しました。

創作にご興味があったのですね。

かっこよくいうとそうですね(笑)。創作に興味があって。工芸は小、中学年くらいから好きだった記憶があって。よく京都に日帰りで母に連れて行かれて染物だったり、織物だったり、焼き物だったり、お寺とか日本庭園を結構見て育った感じはある。NHKの番組があったと思うんです。5分から10分の「日本の手仕事」みたいな。それを中学くらいまで好きで観ていたんじゃないかな。

その後、県立芸大(沖縄県立芸術大学)に行くきっかけになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。

小さい時から工芸がやりたかったので、京都の工芸を調べて、染め物だったら友禅とか、観に行ったりしてたんです。焼き物も好きだったので兵庫もいっぱい焼き物あるし、岡山は備前があるし、遊びがてら見に行ってたんです。

ある日、いつも行ってる本屋さんの本を見て、そこに沖縄の工芸が載ってたんです。

他の工芸、内地の工芸と違ってすごい魅力的に感じたんですよ。パワフルだったり、本当に魅力的だな~と、とっても思ったんですよね。すごい! と思って、それでもう絶対。

book
初めて沖縄工芸を見るきっかけになった本をお持ちいただく。「あれー、もっとのってたきがするけど、思ったより」ー民芸の美(講談社)

それからいろいろな本で調べ始めて。それで、一回沖縄に来たんですよ。進路決めるのに高校の時に来たら、やっぱり沖縄面白いなーって。

見るもの見るもの楽しくって。もちろん違うっていうのもあるけど、文化自体が面白いなって。ちっちゃい時から工芸もそうだけど歴史とか文化も好きで、だから京都とかも好きだったんですけど。で、沖縄来て、あーこれは絶対沖縄の芸大に行きたいって思ったんです。

その時の印象が作品に活きてるんですね。

沖縄の強烈なイメージをそのまま染めたいんだと思います。これをとっても意識しているというよりは、デザインしていくときに自然にそれが出てくる感じというのがあると思います。